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沖縄の激動の歴史が垣間見える!与那原の家庭用品の店マルサ
その店、単なる古い家庭用品店に非ず
沖縄本島でいちばん小さい町、与那原町。その親川通りという通り沿いに建つとある古い家庭用品の店に、なにやら面白い展示があると聞きつけてやってきました。その店の名は、マルサ。
昔からある古い家庭用品店という印象を受ける飾り気のない外観ですが、いったいどんなものがあるのでしょうか。入ってみましょう。
店内の雰囲気もまさに昭和!実家にあったような瀬戸物や金物が所狭しと陳列棚に並んでいます。
入口から入って正面のコーナーに目をやると、壁になにやら古い紙のようなものが展示されているのが見えます。
そう、実はこの小さな一画に沖縄の歴史を物語る貴重な資料や物品が展示されており、プチ歴史博物館のようになっているのです。
店主の崎山さんに貴重なお話を伺う
「お店に来られるのは初めて?」とレジカウンターにいた男性に声をかけられました。
こちらの方がマルサ店主の崎山 宗秀さん。
初めて来店した旨を伝えると、「そう、じゃあちょっと説明しようね。」と展示物についてとても丁寧に解説してくださいました。
こちらに展示されているのは崎山さんがお兄さんから譲り受けたという、先代のお父様がこの店を創業した当時の書類だそうです。お兄さんからこの書類をどうするかはお前に任せると言われ、崎山さんはせっかくだからと3〜4年ほど前から店内で展示を行うようになったそうです。
当時の琉球復興金融基金局、通称・復金(ふっきん)から発行されたという火災保険料積立金通帳。
内側にはこんなふうに手描きで金額が書き込まれているのですが、左ページの赤い印鑑が押されているところで、戦後沖縄で一時的に使用されていたB型軍票(いわゆるB円)からドルに通貨が切り替わっているのが分かります。(法定通貨の切り替えが行われたのは1958年)
他には英語が併記された手書きの企業免許申請書やアメリカ統治時代の証書、B円の印紙、電信電話公社(NTTの前身)のドル表記の債権票、日本博覧会(見本市)の出品者一覧パンフレットなど貴重な資料がずらり。紫外線などの影響で既にかなり字が薄くなってしまったものもありますがこのまま誰の目にも触れずにお蔵入りするよりは、と展示しているそうです。
白黒の写真は戦後にこの店がある場所で撮影されたもの。
現在の「マルサ」の前身、崎山さんのお父さんが営んでいたという「崎山金物店」の店先の風景です。
1960年代、車両はまだ右側通行の時代。お店の前を通る親川通りの道幅は変わってないそうですが、当時の車両の幅が小さいのでずいぶんと広く見えます。
まるで沖縄の昭和博物館
創業当時の資料類の他には、お店で取り扱っていた商品等を集めたちょっとした展示コーナーがあります。
「わざわざ集めたり買ったりしたものではなく、店にあったものばかりだよ」と崎山さん。
復帰から6年後の1978年(昭和53年)、自動車が右側通行から左側通行へ変更が行われた通称ナナサンマル。その施行直前まで道路標識にかぶせていたカバーだそうです。
レトロな金属製の広告看板は当時の取扱商品メーカーさんから譲り受けたもの。今はなかなか探しても見つかりません。
こちらは木炭を入れて使うアイロン。右側に見えているのは軍艦の砲弾が入っていた薬莢(やっきょう)だそうです。
ラジオの子機。当時はラジオ受信機が高価だったため、集落に置かれた親機(受信機)から有線で各家庭に繋いで電波が届けられていたんだそう。
左側はたばこケース。当時のたばこはフィルターが無いぶん短かかったので、この高さで入っていたのだそう。奥に見えているガラス瓶はバヤリースの瓶。当時からロゴは大きく変わっていないのが分かります。
ヤクルトの瓶。当時は牛乳と同じように毎朝各家庭に瓶で配達されていたそうです。
数こそ多くはありませんが、戦世からアメリカ世、そして大和世へと移り変わる激動の沖縄の歴史を物語る貴重な資料を見ることができました。なにより、崎山さんのお話がとても興味深く面白いのです。
しかし、マルサは築80年を過ぎていよいよ建物の老朽化が進み、いずれは取り壊さなければならなくなるそう。崎山さんは「あと何年営業が続けられるかね」とおっしゃっていました。
天井の塗装が剥がれてきており、
雨漏りの跡も。
たくさんお話を聞かせていただいた感謝を伝えると、崎山さんは「私も話せて良かったです。この建物もいずれはなくなってしまうから、この場所でこうやって写真を見ながら人に伝えられるというのはとてもありがたいことです。」とおっしゃっていました。
是非たくさんの人に気軽にお店を見にきてほしい、とのことです。
レトロな掘り出し物がざっくざく
店内もとても気になっていたので探索してみることに。
床の模様もかわいい
高級回転式(?)のかつらむき器。パッケージの女性がレトロで良い!
ちょっと某ネズミに似ているキャラクターが描かれた昔のコップは50円とお買い得。
これは炊飯器?かと思いきや、いわゆる魔法瓶だそうです。象印!
内側が魔法瓶の仕様になっており、現在の保温調理器のようなものだそう。炊飯器が発売されるよりも前に使われてたんだそうです。
人気のアルマイトの弁当箱も。以前はもっとたくさんあったそうですが、噂を聞きつけ那覇やあちこちから買いにきた人がいて少なくなってしまったと笑っていました。
極めつけはこれ。テレホンドレス!!!あっと声が出るほど懐かしかったです。
かつては固定電話にこぞってフリフリの服を着せていたなんて、Z世代に言っても絶対に伝わらないんだろうな。。
マルサよいとこ一度といわず二度三度おいで
与那原町の親川通りにある家庭用品の店マルサ。何度か前を通りがかったことはありましたが、お店に入ったのは初めてでした。
とある小さなお店の歴史に詰まった、沖縄の歴史。
こうして資料を残して生の声で伝えてくださることの大切さ、ありがたみをひしひしと感じました。
まだまだほんの一部ですが、沖縄のことをまたひとつ深く知ることができた気がします。
是非みなさんもお店を訪れて、お話を聞いてみてください。
崎山さん、貴重なお時間をありがとうございました。
台所用品の店 マルサ
沖縄県島尻郡与那原町与那原584(親川通り)
TEL:098-945-3571
営業時間:11:00〜17:00頃
定休日:日曜日
HP(与那原町観光ポータルサイト)